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フィルムEOS史②

  • 写真部 早稲田大学
  • 4月21日
  • 読了時間: 8分

1987年3月に産声を上げたEOSシステムは、2004年のEOS Kiss 7に至るまで進化を続けていくことになります。

今回はその第一世代(1987~1989)を取り上げていきます。


EOS 650/EOS 650 QD

EOS初号機として1987年3月に華々しくデビューしたのはこのEOS 650でした。

8点という当時としては数の多い電子接点を持つEFマウントを採用し、T80に搭載されたCCDによるコントラスト方式ではなく、CMOSによる中央1点のTTL位相差AFを搭載していました。

最高シャッタースピードが1/2000と、現代の基準から考えるとやや物足りない部分はあります。ドライブは3コマ/秒です。

ファインダーは倍率0.8倍、視野率94%です。視野率はそこまで高くないですが、後年のAF一眼レフに比べるとやや大きな倍率を持つファインダーでした。

AFは動体追従でなければ十二分に実用で(これはレンズ側のモーターにも依存しますが)、シャッターボタンを押すと官能的なモーター音を含む独特なシャッター音を発してくれます。

ボディの形状はFDマウントのTシリーズを踏襲しつつ、正面から見て右下の角がないなど、他のキヤノン製カメラとはまた違った独特のデザインに仕上がっていました。


グリップは交換式になっており、3種類のグリップが用意されていました。

・GR-30:650の標準装備。

・GR-20:620(後述)の標準装備。サイズはGR-30と同じで、リモコン用端子を搭載した。

・GR-10:大きなグリップ。本体の高さよりも大きい。リモコン端子は非搭載。


また、QDはQuarts Dateの頭文字で、裏蓋をクオーツデートバックEやテクニカルバックE(+キーボードユニットE)に換装することで日付などを書き込むことができました。


EOS 620

EOS 650の上位機種として650から2ヶ月遅れの1987年5月に発売されたのがEOS620です。

ボディは650と共用でしたが(電子ダイヤルはゴム製に変更されました)、肩液晶には均一照明(有機EL)機構を搭載し、液晶の視認性が向上しました。

シャッタースピードは最高1/4000を達成し、明確に上位機種としての立場を確立しました。


EOS 750 QD

EOSシリーズ初の廉価機として1988年10月に発売されたのがEOS 750でした。

プリワインド機構を搭載していたため、撮影中に謝って裏蓋を開けてしまっても撮影済みのフィルムは助かるという安全装置付きでした。

このカメラのもう一つの大きな特徴は、EOSシリーズ初の内蔵ストロボです。しかもオートリラクタブル(自動開閉)機能を搭載しており、低照度の環境で自動ポップアップ&充電をし、撮影後は自動で本体に戻っていくというハイテクな機構でした。

650シリーズに比べてAEモードが大幅に絞られ、普及機として扱われていました。

最高シャッタースピードは1/2000、ドライブは1.2コマ/秒と、650に比べてさらに機能を絞ったものになっています。

ファインダーは倍率0.8倍、視野率92%と、こちらも650に比べさらにコストカットが行われました。


EOS 850/EOS 850 QD

EOS 750からさらなるコストカットをし1988年10月に発売されたのがEOS 850です。

ボディや機能は共通で、ストロボやデータバックの省略が行われました。

1989年4月からはデータバック付きのQDとしての販売も行われました。


EOS 630 QD

EOS 620の上位機種、つまり650シリーズの頂点として1989年4月に発売されたのがEOS 630です。

ボディは620と共用でありながら、最高シャッタースピードは650同様の1/2000に抑えられていました。

ドライブは5コマ/秒になり、のちにミノルタα-9が更新するまでボディ単体としては最高速を誇っていました。

これまでのEOSシリーズのボディは黒色のみでしたが、630では黒色の他にメタリックグレーの展開もありました。


EOS-1/EOS-1 HS

Canon F-1に始まる"1"の系譜を受け継ぎ、EOS初のフラッグシップとして1989年9月に発売されたのがEOS-1です。

AFセンサーが大幅に進化し、合焦速度はさることながら、動体予測機能も1段上の精度を誇りました。

ファインダーは倍率0.72倍、視野率100%と、プロユースを考えた高性能なものとなっていました。交換スクリーンも7種展開され、用途に合わせて交換することが可能でした。またEOSシステムでは初となる±2dptrでの視度補正機構を内蔵していました。

最高シャッタースピードは1/8000を達成し、まさにフラッグシップらしい贅沢な仕様になっていました。

EOSシリーズの代名詞にもなっているサブ電子ダイヤルを搭載したのもEOS-1が初めてである。

ボディデザインは650シリーズとは大きく変わって流線型を多用したものでした。これはT90から続く方向性であり、結果的にデジタルEOSの時代になっても採用されるデザインとなりました。

グリップは2種類が用意されており、これを入れ替えることで連写時の最高コマ数が変化しました。

標準装備はGR-E1で、電池は2CR5、2.5コマ/秒です。

もう一つがPB-E1で、単三電池8本、5.5コマ/秒でした。

PB-E1付きのものはHSと呼ばれ、グリップには縦位置撮影用のシャッターボタンが搭載されていました。


EOS RT

第一世代の締めくくりとして1989年10月に発売されたのがEOS RTです。

ボディやアクセサリーは650シリーズと共用で、内部に関しても630がベースとなっています。

RTが他のカメラと大きく異なるのはミラー機構です。

RTではCanon ペリックス以来となるペリクルミラーを搭載していました。

ペリクルミラーは半透明のミラーで、従来の一眼レフとは異なり撮影時のミラーアップが不要でした。そのため撮影時にブラックアウトがないという利点があります。

一方で半透明ということはその分反射する光もあるので、1/3EVほどの光が失われてしまうという欠点もありました。

ミラーアップが不要であることから、レリーズタイムラグは従来のものに比べて格段に短くなっていました。あまりにも速くなってしまったことで、従来のユーザーが混乱することを防ぐためにラグを長くするカスタムファンクションが搭載されていました。

半透明ミラーはこれ以降もEOS-1N RSに搭載され、近年ではSONY Aマウントのトランスルーセントミラーなどでも採用されました。

ミラーが動かないため、シャッターとワインダーのモーター音だけでシャッター音が構成されており、唯一無二の使用感があります。


第一世代EFレンズ

EF50mm F1.8 (1987年3月)

190g、5枚羽根、フィルター径52mm、フードES-65II

距離計窓付き、金属マウントの豪華仕様。

フードは爪をパチンとはめる方式。


EF35-70mm F3.5-4.5 (1987年3月)

245g、5枚羽根、フィルター径52mm、フードEW-68B

回転式ズーム。

フードは爪をパチンとはめる方式。


EF35-105mm F3.5-4.5 (1987年3月)

400g、5枚羽根、フィルター径58mm、フードEW-68B

直進ズーム、非球面レンズの採用。

フードは爪をパチンとはめる方式。


EF15mm F2.8 フィッシュアイ (1987年4月)

330g、5枚羽根、フィルターは後部ホルダーにゼラチンフィルター差し込み、フード一体型

対角線方向に180°の画角を持つ対角魚眼レンズ。


EF28mm F2.8 (1987年4月)

185g、5枚羽根、フィルター径52mm、フードEW-65II

非球面レンズを採用。

フードは爪をパチンとはめる方式。


EF100-300mm F5.6 (1987年5月)

685g、8枚羽根、フィルター径58mm、フードET-62 II

直進ズームを採用。

フードは爪をパチンとはめる方式。


EF70-210mm F4 (1987年5月)

605g、8枚羽根、フィルター径58mm、フードET-62II

直進ズームを採用。

フードは爪をパチンとはめる方式。


EF100-300mm F5.6L (1987年6月)

695g、8枚羽根、フィルター径58mm、フードET-62II

直進ズーム、蛍石レンズ、UDレンズを採用。

EFマウント初のLレンズ。

フードは爪をパチンとはめる方式。


EF135mm F2.8 ソフトフォーカス (1987年10月)

390g、6枚羽根、フィルター径52mm、フードET-65III

非球面レンズを移動させることで2段階のソフトフォーカスへの切り替えに対応。

球面収差のコントロールによる切り替え。

フードは爪をパチンとはめる方式。


EF28-70mm F3.5-4.5 (1987年11月)

300g、5枚羽根、フィルター径52mm、フードEW-68A

回転ズーム、非球面レンズを採用。

フードは爪をパチンとはめる方式。


EF300mm F2.8L USM (1987年11月)

2,855g、8枚羽根、フィルター径48mm(鏡筒にフィルターホルダー内蔵)、フードET-118II

蛍石レンズ、UDレンズを採用。

USMを初採用。

フードはネジで締め付ける方式。


EF50mm F2.5 コンパクトマクロ (1987年12月)

280g、6枚羽根、フィルター径52mm、フードES-62(遠景用、アダプター必須)

倍率0.5倍のハーフマクロ。

ライフサイズコンバーターEFを使用すると等倍撮影が可能。

フードアダプターはねじ込み式。


EF50-200mm F3.5-4.5 (1987年12月)

690g、8枚羽根、フィルター径58mm、フードET-62II

直進ズームを採用。

フードは爪をパチンとはめる方式。


EF28-70mm F3.5-4.5 II (1988年6月)

300g、5枚羽根、フィルター径52mm、フードEW-68A

回転ズーム、非球面レンズを採用。

フードは爪をパチンとはめる方式。


EF35-135mm F3.5-4.5 (1988年6月)

475g、6枚羽根、フィルター径58mm、フードEW-68B

直進ズーム、非球面レンズを採用。

フードは爪をパチンとはめる方式。


EF50-200mm F3.5-4.5L (1988年6月)

695g、8枚羽根、フィルター径58mm、フードET-62II

直進ズームを採用。

フードは爪をパチンとはめる方式。


EF35-70mm F3.5-4.5A (1988年10月)

230g、5枚羽根、フィルター径52mm、フードEW-68B

回転ズームを採用。

EOS 750のキットレンズとして発売。ピントリングを省略した。

フードは爪をパチンとはめる方式。


EF600mm F4L USM (1988年11月)

6,000g、8枚羽根、フィルター径48mm(鏡筒にフィルターホルダー内蔵)、フードET-161II

蛍石レンズ、UDレンズ、USMを採用。

フードはネジで締め付ける方式。


EF200mm F1.8L USM (1988年11月)

3,000g、8枚羽根、フィルター径48mm(鏡筒にフィルターホルダー内蔵)、フードET-123

UDレンズ、USMを採用。

後継レンズが存在しない唯一無二のレンズ。

フードはネジで締め付ける方式。


EF24mm F2.8 (1988年11月)

270g、6枚羽根、フィルター径58mm、フードEW-60II

リアフォーカスによるフローティング効果で非点収差を軽減。

フードはバヨネット式。


EF100-200mm F4.5A (1988年12月)

520g、8枚羽根、フィルター径58mm、フードET-62II

直進ズームを採用。

ピントリングは省略。

フードは爪をパチンとはめる方式。


EF28-80mm F2.8-4L USM (1989年4月)

945g、8枚羽根、フィルター径72mm、フードEW-79

回転ズーム、非球面レンズを採用。

MFは電気接点による電子MF。

フードは爪をパチンとはめる方式。


EF50mm F1.0L USM (1989年9月)

985g、8枚羽根、フィルター径72mm、フードES-79II

非球面レンズ、高屈折率レンズ、USMを採用。

EFマウントの限界値とも言われる。後玉ガラスに接点がめり込んでいる。

フードは爪をパチンとはめる方式。


EF85mm F1.2L USM (1989年9月)

1,025g、8枚羽根、フィルター径72mm、フードES-79II

非球面レンズ、フローティング機構、USMを採用。

フードは爪をパチンとはめる方式。


EF80-200mm F2.8L (1989年9月)

1,330g、8枚羽根、フィルター径72mm、フードES-79

回転ズームを採用。

フードは爪をパチンとはめる方式。


EF20-35mm F2.8L (1989年10月)

570g、6枚羽根、フィルター径72mm、フードEW-75

非球面レンズ、インナーリアフォーカスを採用。

フードはバヨネット式。


EOSシリーズは、1990年のEOS 10の発売から第二世代へと移行していきます。

同年に発売されるEOS 700は第一世代に含めることもできますが、それも含めてまた次回以降。

 
 
 

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